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ハルとは…
同じ中学で、中一の時にたまたま同じクラスになって、俺はサッカーやってて、ハルは野球やってて、部活は違ったけど。
家も近所だったし、なんとなく気も合って、進級して違うクラスになっても一緒に学校行ったり、休みの日には、一緒に遊びに出掛けたりしてた。
時々将来の話なんか…漠然とだけどさぁ…
“プロ野球の選手になる夢は諦めてないぜ”とか
俺も“ワールドカップ出てみたい”とか
二人ともまだガキで…そんな風に夢語って、それなりに毎日充実してたと思う。
それが…少しずつ狂いだしたのは、中三の春。
最後の大会の前だった。
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その日部活が終わって部室へ戻ると、野球部の連中が部室の前で騒いでて
同じクラスのヤツに聞いたら、練習中にハルが手首を骨折したって教えてくれて、それで俺、慌ててハルの家を訪ねたんだ。
『大丈夫かよ?手首…』
『あぁ…骨折っつってもたいした事ないんだけどね?
俺こっち…左手が一応利き手だから不便だけど右手で字も書けるし、他の事もできないワケじゃないから大丈夫っしょ?』
左手首のギプスが痛々しくて、俺の方が狼狽えた。
飯を食うのとボールを投げる以外、右手でも出来るみたいだけど、流石に骨折は辛いに決まってる。
だけどハルは『俺右手でできるかな…アレ(笑)』なんて冗談言って笑ってて、俺は少しだけホッとした。
ハルは“野球部のエース”で、その大会が“中学最後の大会”だったって事。
それを本人はあんまり気にしてなかったように見えたからな?
まだ中三だし、ケガさえ治ればまた、ってさ…
だけど本当は違ったんだ。
今思えば当たり前だと思うけど、夢中になってやってた野球、しかも最後の大会。
全力で駆け抜けてきた毎日が全て“無駄”になっちまったんだからな?
そりゃあどう考えたって、平気なワケなかったんだ。
それに
そんな事より重大なモノを抱えてたなんて予想もしてなかったし、その“事実”に俺は…
全く気付いてやれなかったんだ…
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