俺達に吹いた、風。

3/10
前へ
/195ページ
次へ
. ハルとは… 同じ中学で、中一の時にたまたま同じクラスになって、俺はサッカーやってて、ハルは野球やってて、部活は違ったけど。 家も近所だったし、なんとなく気も合って、進級して違うクラスになっても一緒に学校行ったり、休みの日には、一緒に遊びに出掛けたりしてた。 時々将来の話なんか…漠然とだけどさぁ… “プロ野球の選手になる夢は諦めてないぜ”とか 俺も“ワールドカップ出てみたい”とか 二人ともまだガキで…そんな風に夢語って、それなりに毎日充実してたと思う。 それが…少しずつ狂いだしたのは、中三の春。 最後の大会の前だった。 . その日部活が終わって部室へ戻ると、野球部の連中が部室の前で騒いでて 同じクラスのヤツに聞いたら、練習中にハルが手首を骨折したって教えてくれて、それで俺、慌ててハルの家を訪ねたんだ。 『大丈夫かよ?手首…』 『あぁ…骨折っつってもたいした事ないんだけどね? 俺こっち…左手が一応利き手だから不便だけど右手で字も書けるし、他の事もできないワケじゃないから大丈夫っしょ?』 左手首のギプスが痛々しくて、俺の方が狼狽えた。 飯を食うのとボールを投げる以外、右手でも出来るみたいだけど、流石に骨折は辛いに決まってる。 だけどハルは『俺右手でできるかな…アレ(笑)』なんて冗談言って笑ってて、俺は少しだけホッとした。 ハルは“野球部のエース”で、その大会が“中学最後の大会”だったって事。 それを本人はあんまり気にしてなかったように見えたからな? まだ中三だし、ケガさえ治ればまた、ってさ… だけど本当は違ったんだ。 今思えば当たり前だと思うけど、夢中になってやってた野球、しかも最後の大会。 全力で駆け抜けてきた毎日が全て“無駄”になっちまったんだからな? そりゃあどう考えたって、平気なワケなかったんだ。 それに そんな事より重大なモノを抱えてたなんて予想もしてなかったし、その“事実”に俺は… 全く気付いてやれなかったんだ… .
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加