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俺は慌ててハルを探した。
自宅にも帰ってなくて、街中のハルが行きそうな場所を探し回った。
嫌な考えばかりが募って、不安で仕方なくて…
すると、いつも二人で行ってたゲーセンでハルの姿を見付けたんだ。
「おい、ハル!こんなとこで何やってんだよ?
お前引退試合出ねぇの?」
「あぁ…そんなんあったねぇ…」
「そんなんあったねぇってお前…」
「いいんじゃないの?俺がいなくっても代わりのピッチャーもいるし、人数足りてるでしょ?」
対戦型のゲーム画面から目を離さずに俺に言った言葉に、当然俺はイラッとした。
「そういう問題じゃないだろ?もう手首治ってんだろ?
だったら行けよ。行って後輩達と試合してこいよ!」
肩を掴んでコッチを向かせると、すげぇ冷めた目で俺を見た。
「弦くんには関係ないじゃない…なんなの?そんなに熱くなって」
「は?だってお前、最後の試合だろ?なんでやらねぇの?
三年間ずっと夢に向かって頑張ってきたんじゃねぇの?プロ野球選手になるって夢はどうしたんだよ?」
「ふはっ!そんなのただの夢でしょう?
現実を見たの、俺は。
なれっこないじゃない?プロ野球選手なんて…ここの中学じゃ所詮無理よ?」
「あぁ?お前…」
「いいからほっとけよ!」
ハルが怒鳴るなんて初めてだった。
それと同時に、肩を掴んでた手を振り払われて、俺はそれ以上何も言えなくなった。
その日からハルは変わっちまった。
一緒にふざけ合ったり、冗談言って笑ってたのに、どっか冷めちまって…
志望校も、野球の名門て言われてる高校に行きたいって言ってたのに『将来を考えて』って、大学進学率のいい高校に変えた。
自分も元々その高校に行くつもりだったから、ハルと一緒ならそれはそれで嬉しかったけど
ハルの事を考えたら、『本当にそれでいいのかよ?』ってずっと思ってたんだ。
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