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三回目の進路指導があったその日、俺はハルと一緒に帰る約束をして、もう一度それをぶつけてみる事にした。
あの日から変わっちまったハルに…
授業中も休み時間も、時々遠い目をしてぼんやりしてるハルに
最後にもう一度だけ、確認しておきたかったんだ。
「なぁハル、やっぱ変わんねぇの?志望校」
「何、弦くんまたその話?
何度聞いたって同じだよ?変わらないよ、俺の気持ちは」
冬間近の街の風が、距離の開いちまった俺らの間をすり抜けて行く。
「これで最後だから教えてくれよ…
本当に後悔しないのかよ?本当にもう、諦めちまったのかよ?」
すると、ポケットに手を突っ込んで背中を丸めて歩いてたハルが、ふっと笑ったんだ。
「何が可笑しいんだよ?俺は本気で聞いてんだよ」
「俺ね、弦くん…
これさぁ…聞き流して欲しいんだけど…」
毎度のその冷めた態度にイラついて、拳を握った瞬間だった。
ハルの口から、思いがけない言葉を聞いたんだ。
「俺さぁ…周りに心配されんのも、同情されんのも嫌なのよ…」
「は?…どういう意味?」
足を止めて、ハルの肩を掴み立ち止まらせる。
相変わらず細せぇ肩だ…
「何なんだよ、一体…」
するとハルは振り向かず、はぁ…っと息を吐き空を仰いだ。
それから…
「俺ね、やらないんじゃなくて…出来ないのよ…」って…
そう言ったんだ。
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