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私になにも言わないまま、話を進めていたので、不安なようだった。
「違うの」
と瑠可は言った。
「なんだか、此処が人生のピークな気がして。
だったら、このあと、落ちて行くだけじゃない」
突然、開(ひら)けた目の前が眩しすぎて、逆に不安になる。
そんな感じだった。
「縁起の悪いことを言うな」
と言いかけた和歩は、いや、と言った。
「瑠可。
ピークじゃなくていいんだ。
結婚ってきっと、静かに平凡に、ずっと続いていくものだ」
和歩が言うと、その言葉が染みた。
あの夕暮れ、和歩がそっと本を差し出してくれた。
あんな静かな日常が。
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