俺がなくしたもの

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あの種は、俺の研究室の隅っこから見つかった。 フィールドワーク重視で数十年やってきて、植物学者として知識は自信があったが、その種は全く何なのかわからなかった。どんな花が咲くんだろう?久しぶりに純粋な好奇心が湧いた。すごくわくわくしたぜ。 数えたら、全部で十粒しかなかった。 まず一つ、手探りで栽培を始めた。艶やかな芽が出て、順調に育ち始めた。俺は残りの種のためにもきちんと栽培日誌をつけながら、毎日観察を続けた。 茎がかなり太くなり、背も高くなった。感覚として、花が咲くのも近いんじゃないかと期待したね。 そんな時、ある手記を見つけた。 その種を収集した時のもののようだった。
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