俺がなくしたもの

4/11
前へ
/22ページ
次へ
それは、太陽の光を乱反射して、付近を白く映すほどだったという。一瞬目が見えなくなるほどの明度で、足を踏み出せなかった。神々が住むと言われる山で出会った、神々しいほどの光。人が立ち入って良いのだろうかとA氏は躊躇ったようだ。 それがこの植物の自己防衛の手段なのだろう。 カメラなどない時代だが、A氏は何点かのスケッチを残していた。しかし残念ながら、花は終わったところだったようで、花の形状は記録がなかった。 そして、地面に落ちていた種を数百個に上るほど拾い集め、A氏は山を降りた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加