僕の大好きなこと

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引っ越した頃は、俯いたままそわそわ落ち着かない気持ちだった。でも、僕にとって幸いなことに、郊外のおじいちゃん家には広い庭があった。僕は庭でほとんどの時間を過ごすようになった。庭中に僕の植えた花が季節毎に生き生きと咲き競い、空気までも色鮮やかに変えていた。 でも、だんだん庭だけで飽きたらなくなった僕は、通学路とか、遊びに行く場所とか、いろんなところに勝手に種を蒔いた。湾岸のマンションエリアと違い、おじいちゃん家のほうは土の地面がたくさんあったから。 猫に掘り返されたり、雑草と間違えて抜かれたりもしたが、大半はきれいに花を咲かせてくれた。 学校に行く途中の土手に、毎年超大輪の花を咲かせるひまわりたちは、実は僕の仕業だ。こんなところになぜ?と話題になって、みんなが見てくれていることが僕は嬉しくてしかたなかった。 僕が育てたかどうかは大した問題じゃなくて、僕は花を見てきれいだと思ってもらえることがとにかく嬉しいのだ。
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