第1章

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「 夢 COME ON !! 」 -1- 「ワハハハハ~」 二月の水曜日の昼下がり。横浜市金沢区役所の会議室で地域デビュー講座が開かれ、今日が全三回の最終日。なんとなく和やかな雰囲気が漂う会場のホワイトボード前で、男性講師がまとめのあいさつをしている。机に沿った椅子に腰をかけた三十数名の中年男女が、聞き落すことの無い様にと講師の顔を見つめている。 「あっと言う間に三回の講座を終わることになりました。途中欠席者が一人も出なかったので非常に感激しております。」 「講座の申し込み用紙に三回すべて出席することが条件と書いてありましたよ。」 「そうでしたね。」 「ワハハハハ~。四回目っていつですかぁ?」 「素晴らしい!皆さん、やる気十分ですね。地域デビューの第一歩は、そのやる気があるかどうかですから。新しい人生に一歩踏み出す皆様が必要に感じるのが、きょう(・・・)いく(・・)ときょう(・・・)よう(・・)だって言われております。」 「教育と教養?まだ勉強するのですか?」 「今日行くところと、今日用事があると言うことです。毎日家の中でウロウロしていると。分かりますよね、その結果がどうなるのか。」 「だから参加したのです。」 「参加費無料だし。」 「地元だから交通費もかからないし。よこはまウォーキングポイント事業でもらった万歩計の歩数データを増やさなければならないし。」 「理由はいろいろありますが、地域を理解し、地域と交流し、地域の発展に貢献することで、あなたはもちろん周りの人たちが笑顔で幸せな日々を送ることができるのです。もしかすると主役になる場面に出会うかもしれません。いろいろな人に力をだしていただくように盛り上げてください。さあ、初めの一歩を踏み出しましょう。やりたいことはこれだったと。」 講師の話しが終わるか終わらないうちに、一番前に座っていた男性が手をあげた。 「はい、とてもよくわかりました。そこで提案があります。」 「何でしょうか?」 「私は豊田茂吉と申しまして、泥亀町在住の現在68歳です。65歳まで仕事一本で頑張ってきましたが、退職してからは貸農園で野良仕事をし、会社の後輩と週に一回ゴルフそして飲み会。その後輩に勧められてパソコンを始めたのですが、やっとメールのやり取りが出来るようになりました。メールやっている人はアドレス教えてください。」 「豊田さん、提案は何でしょうか?」
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