第1章

3/11
前へ
/11ページ
次へ
「そうでしたね。実は嫁さんに尻を押されて、この講座に参加したのです。先生の話しを聴いて気が付きました。今まで私は自分だけで楽しんできたのだって。地元の人たちとの交流なんかありませんでした。毎朝の犬の散歩で吠えてくる犬に怒鳴るくらいで、声を出すのはテレビのクイズ番組での回答だけ。嫁さんともほとんど喋りません。もちろん寝室も別です。学生時代に好きになった女なのですが…夢と現実が大きく乖離しておりまして。おかげで仕事に集中できました。」 「豊田さん。」 「そうそう提案ね。この講座の中で数人の人と会話をしました。皆さん、とても面白かった。こんな人が金沢区にも大勢住んでいたのだと分かりました。」 「豊田さん、そろそろ講座を閉めたいのですが。」 「それで、せっかく同じ講座に参加した人たちですから、一期一会を大切にしたいのです。今日でサヨナラなんて寂しいじゃないですか。」 「分かりました。事後グループの立ち上げを考えているのですね。」 「事後?」 受付にいた女性職員が立ち上がり話し始めた。 「すみません、話の中に入り込みまして申し訳ありません。私は今回の講座主催者の金沢区活動センター職員の黒沢です。事後グループというのは、金沢区主催行事参加者で有志の人たちが集まって何かを考えて実行する会です。押し付けではなく参加者が自らの意志で活動できるように、応援やアドバイスをするのが私たち活動センターの仕事です。センターの愛称は【ゆめかもん】です。自由に利用できるミーティングコーナーや会議室、印刷機等の貸し出しをやっています。区内だけに限らず、身の回りの情報や資料もたくさん用意しております。是非皆様の活動に御利用ください。この会議室は講座終了後に御利用できますので、まずは皆さんで話し合いをしてみてください。質問や相談などがありましたら、出来る限り応えたいと思いますので、どんどんお願いします。」 「素晴らしい!どうですか皆さん、話し合いをしましょう。参加したい人は挙手してください。あ、あなたはどうですか?いいじゃないですか?何か予定があるのですか?参加しましょうよ。」 「豊田さん、とりあえず今回の講座を終わらせていただきます。なお、事後グループとしての集会は、あくまでも自主的自由参加でお願いします。」 「はい。」 「それでは本日の講座は終了致します。もう一度、講師の先生に拍手で御礼の挨拶をしましょう。」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加