思い知らされた現実

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それから、私たちの避難所生活が始まった。 避難所には沢山の人が集まっていて、赤ん坊からお年寄りまで様々な人がいた。 毛布の配給はされたが、何しろ人数が多くて全員には行き渡らない。 それは食料や水も同じで、ただでさえ他人とプライベートな空間もなく過ごしているストレスが相まって、避難所はピリピリした雰囲気に包まれていた。 小さな子供はその空気を敏感に感じとるのだろう。泣いている子供が多くて悲しくなった。 避難所生活を始めて3日目、余震の数は500回を超え、私たちは震度3程度の余震では驚かなくなり、気付かない事すらあるほど、余震に慣れてしまっていた。 でも、また大きな地震があるかもしれない、という恐怖心は薄れなかった。 もう、いい加減家に帰ってゆっくりしたいと思うけれど、また震度7の地震があったら……。そんな思いが、私たちを避難所に縛り付ける。 そんな時、別の避難所へ避難していた彼氏が会いに来てくれた。 「久しぶり。……怖かったな」 その言葉に、耐えていた涙が零れ落ちる。彼だって被災者で、怖かったはずだから、絶対に泣かないって決めてたのに。 外へ移動して、夕陽を眺めながらポツリと呟く。 「地震って、怖いね。……テレビで見てた時は、こんなに怖い物だなんて思ってなかった」 「そうだな。俺もだ」 どんなに科学が進歩しようと、どんなに人間が世界を支配してようと、私たちは自然の前では無力だと、痛感させられた。 ――私たち人間は、自然災害には絶対に勝てない。
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