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大学のカフェテリア。
遠くに集まる華やかなグループをちらりと見た。
オシャレで、可愛くて、かっこいい男女混合10人ほどの中に、1人、雰囲気の違う彼。
服装もシンプルだし、髪もそんなにいじってない。
グループの中に居ても、1人、全然違うところを見てたりして。
やっぱり、いいな。
心の中、呟いた。
「私にはボーっとしてるだけにしか見えないんだが?」
小さくてオシャレな丸いテーブル、私の斜め前に座る親友の亜季が、私の視線をたどると片眉を持ち上げる。
「咲には特別に見えるんだから、不思議だよな」
亜季は首をかしげながら、A定食のカツを頬張った。
「恋する乙女よ、早く食え。じゃないと私が食っちゃうよ」
亜季は味噌汁をすすりながら私のおかずをじっと見る。
なんだか食欲もない私は、お皿を少し彼女の方へ押した。
「2切れ食べて」
「お、やったね!いただきますっ!」
B定食の照り焼きチキンに箸を伸ばす亜季を見ていたら、彼女は大きな口でパクリと頬張ると、
「うまっ!」
一度目を見開いて、
「恋を患うと食欲低下に陥る説は誠であったか」
どこの時代だとつっこみたくなる口調で言った。
「……好き……なのかなぁ」
いつだって私は彼と、いや、彼が一緒に居るグループとは遠い場所に居る。
取っている講義は割と同じなんだけれど、まだ一度も会話したことも、目が合った事すらない。
彼の事は何も知らないのに、好きなのだろうか。
「だが、そうやって見つめてるじゃないか」
「……っ、」
「咲はヤツに視線を送る時、決まって頬がピンクだぞ?」
亜季はそう言うと照り焼きの3切れ目をパクリと食べた。
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