想いを告げる

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嬉しいのと恥ずかしいのとが混ざって、目を伏せると。 掴まれた手首がクッと僅かに引かれた。 「この間の続き……」 「……続き?」 聞き返す私に彼はコクリと頷いて、フッと微笑むと口を開いた。 「俺、青柳咲といいます」 「あおやぎ、さく……」 「そう、青い柳に咲く」 「私の名前は、立花咲です」 「たちばなさき、さん」 「はい」 「咲ってもしかして……同じ?」 「……そうみたい、ですね」 「俺、経済学部の3年です」 「はい。それも、同じ、です」 「もしかして、これから受ける講義も……?」 「……そう、だと思います」 じっとお互い見つめ合って。 なんだかおかしくて、2人同時に噴き出した。 「“日常を見ろ”か」 不意に、彼がぽつりとつぶやいた。 それに首をかしげた私に、彼は緩く首を振り、掴んでいた手首をそっと離すと、大きな手を私に向けた。 「好きです。俺と付き合ってください」 ジワリ、浮かぶ涙を沢山瞬きして。 緩む顔は抑えきれない。 「よろしくお願いします」 握手の要領で彼の手をそっと掴んだ。 彼は握手した手を楽しそうに2度ほど振ってから離す。 そして、改めて、私の手を繋ぎなおした。 「サキって呼んでいいですか?」 「はい、もちろん」 「俺のことはサクって呼んでください」 「わかりました」 「それから、」 「なんですか?」 「お互い、敬語、やめませんか?」 見上げた彼の頭上には、舞い散る桜吹雪。 「はい、やめましょう」 そう言って見上げた私に、彼は破顔して。 繋がっていない方の手が持ち上がる。 「サキ、頭に花びら沢山のせてるよ」 大きな手がふわりと頭に載せられて、小さなピンクをつまんで差し出す。 バタバタと学生が移動する音に顔を向けて。 「講義の事、忘れてた!」 彼に手を引かれ、教室へと駆けだした。 ~fin~

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