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 つぎの朝、食堂手前のホールには一枚の模造紙が張りだしてあった。前日の戦闘訓練の成績が順番に全員分書かれていた。成績の発表なら各自がつねに携行しているスマホと同サイズの戦闘コンピュータ端末に送ればそれで済むのだが、わざわざ張りだしたところを考えると、上層部は見せしめと発奮の効果を狙っているのかもしれない。   人だかりの後方からジョージとタツオは順位を眺めていた。上位には全滅までもっとも長時間もちこたえ、敵に最大のダメージを与えたタツオのチームの名前が並んでいた。第1位は天童(てんどう)寂矢(じゃくや)で、第2位は萬(よろず)駆化留(かける)だった。さすがに上はよく見ている。戦闘に最大の効果をもたらしたのは、ジャクヤの魔眼による幻惑効果で、次点は狙撃銃で敵八名を戦闘不能にしたカケルだった。  「第3位はタツオか。今回はあまりぱっとしなかったな」  涼しい声でジョージがいった。エウロペとの混血児の順位はごく平凡な第11位である。 「そっちこそいうことを聞かない部下相手によくがんばっていたじゃないか」  訓練で指揮官を命じられたジョージの下には、五王(ごおう)派、東園寺(とうおんじ)派が多く、命令違反とはまではいかなくとも意図的で微妙なサボタージュ行為が戦闘中にあったようだ。
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