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「それよりさすがにサイコだね」  タツオの隣の第4位には2番目に敵を苦しめたサイコの名前があった。10倍以上の敵を相手にタツオのチームにつぐ28分間もちこたえている。タツオはサイコのまったく感情をあらわさなくなった目を思いだした。自動小銃の銃口のように空虚な黒い穴。サイコは兄・カザンの死後まるで別人のように変わってしまった。  ホールに集まった「須佐乃男(すさのお)」候補者たちの話し声がぴたりと止んだ。漆黒の喪服を身につけたサイコとタツオキがやってくる。このふたりはいつまでカザンの喪に服するつもりなのだろうか。五王重工の次期総帥はちらりと順位を横目で見るといった。 「天童家の呪術(じゅじゅつ)の力を借りた者が今回はいい成績を収めたみたいだな。東園寺さんは第4位か。なぜ、一族の秘伝『呑龍(どんりゅう)』をつかわなかったんだい」  サイコは返事をしなかった。その代わりタツオキにもはっきりとわかるように、タツオをにらんだ。タツオが「止水(しすい)」をつかわなかったのだから、自分も「呑龍」はつかわない。口に出さなくとも、サイコの心づもりはよくわかった。タツオキは半分閉じた目で、タツオを見据えていった。 「そういうことか。だけど、今回の初訓練の結果を見るとはっきりするじゃないか。近衛(このえ)四家に代々受け継がれた秘伝をつかったほうが成績はよくなる」
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