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 急に名前を呼ばれたタツオは再び直立不動になった。 「はいっ」  タツオとサイコの声が期せずしてそろった。 「きみたちはなぜ、秘伝を使用しなかった?」 「それは……」  タツオは口ごもった。まだ手のうちを見せたくない。秘伝をつかうことで、怪物のようぬ見られたくない。そもそも「止水」は切り札で一族存亡の危機に使用を限定されている。理由などいくらでもあった。それは同じ「止水」のつかい手である兄にもよくわかっているはずだ。サイコはいった。 「わたしは逆島少尉が『止水』を使用しなかったため、個人の判断で『呑龍』を封印しました。同じ条件で逆島に勝たなければ、訓練の意味がありません」  少佐の顔が引き締まった。 「それで戦力を温存したまま、敵戦力に殲滅(せんめつ)させられたのか。きみたちは部下を全員死なせたうえ、本土も守れなかったのだぞ。これをどう考える?」  サイコも直立不動でいった。 「もうし訳ありません。次回からは戦力の温存はいたしません」
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