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僕はきっときっかけが欲しかった。 頭の中で流れる夜想曲は物悲しく響き続ける。 よく陳腐なミステリー小説であるじゃないか。 犯人が人を殺す瞬間、何かが弾ける瞬間。 メロディが流れ始める。 荘厳で、悲しげな鎮魂歌。 被害者の境遇より加害者の境遇が可哀想に描かれるのはなぜだろう? すごく不思議だ。 否定に肯定を重ねた。 「頼む、許してくれ! オレが悪かった!」 目の前で何かが声を出す。 あぁ、あれは一応は人間なのか。 でも、人間としては形が醜い。 なぜだろう? 確かあれは自分の父親だったはずた。 でも、あれを父と呼ぶべきなのか甚だ疑問だ。 あれは害虫だ。いわゆる、ゴキブリ。 あれは滅びないらしい。 なぜか? 生殖本能でメスと次々に交尾し繁殖し続けるからだ。 だから、滅びない。 まるで、この男のようではないか。 いや 人間もゴキブリと同等だろう。 だって、本能と快楽を求め狂ったように繁殖するのだから。 下等生物と同じ立場など面白い。
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