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ボクとタツキは親友だ。
周囲の人は、そう思っているだろう。
タツキはいつも僕の側にいてくれた。
僕たちが小学生だったとき、小柄で色白で運動神経が皆無で、何もないところでも転ぶようなダサい僕は、クラスのやんちゃ過ぎる奴らのいじめのターゲットだった。
トイレで小便をかけられ、
ズボンをおろされ、
頭から水もかけられた。
抵抗できないほどビビっていた僕を奴らから救い出してくれたのは、いつもタツキ。
小学生とは思えないほど、背が高く、ガッチリした体型で力もあるタツキは、みんなが一目置く男子だった。
タツキは、ひとりで行動するといじめの手が伸びてくるからと、いつも僕の側にいてくれて・・・。
僕はそんなタツキの横顔を見るのが大好きだった。
タツキはモテた。
彼がやさしかったのは僕だけではなく、女子にもやさしかったから、彼と付き合いたいと思っている女子は多かった。
小学生のときも中学生のときも、バレンタインデー、タツキの机の中はプレゼントがギッシリつめこまれ、手渡しする女子も数知れず・・・。
中学生になると、タツキに彼女ができたんだ。
彼女の名前はサトリ。同じクラスで共に学級委員。
勉強ができると先生もお気に入りの優等生で、タツキが学級委員に立候補したら、すぐに自分も立候補していたから、彼を狙っていたんだろう。
いつも一緒のタツキを奪われると一瞬焦ったけど、中学生の恋なんて簡単で、みんなくっついたり、離れたりしょっちゅう。
タツキとサトリも長続きするわけないと思っていたけど、二人はなかなか別れない。
僕はそのことに苛立っていた。
なぜなら、僕はタツキの彼女が大嫌いだったからだ。
だって、だって、ぜんっぜん美しくないんだよ!
タツキを想っている女子の中には、綺麗な子もいたのに、なんであんなのを選んだんだ?
彼のことなら、すべて認めてきたけど、彼女だけは許せない。
アイツはタツキと釣り合わない。
あの女と付き合うくらいなら、僕の方がましだ。
そうだ、僕こそタツキにふさわしい。
そのとき、僕の中でスイッチがカチリと音を立てた。
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