14:漬物達と、乗り越えたい停滞期

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 試合が終わると、さと子が作った料理以外の食べ物男子達は、手を振っていなくなった。ぎりの助もあれからこれからはもっと草野球を頑張ると意気込んでいた。食べ物男子達と野球を頑張るぎりの助の姿が目に浮かび、微笑ましい。さと子はニコニコと笑っていた。 「何じゃ、ニヤニヤしよって」 「ふふ。始めはどうなるかと思ったけど、案外野球も楽しかったなって」 「でしょうでしょう!? 流石、我等がさと子さんです」  カリー伯爵が何時にも増してグイグイ来るが、その気持ちも分からないことは無い。スポーツには、その試合の数だけ、汗や涙が入り混じっているのだろう。そして、そこがまた、この競技の良い所なのだから。 「カレーは野球のことになるとうるさいんだから。でも、楽しかったね。何だか、普段はあまり関わらない食べ物とも関われて、ぼくも良い経験を出来たよ」 「へぇ。じゃがくんってどんな料理にでも合いそうだけど、あまり関わらない子とかいるんだ?」 「うん。まぁ、にくじゃがだからね~漬物とかおひたしには合うけど、鍋とかと一緒に肉じゃが食べないでしょ?」 「確かに」 「なべ姉とはちょっと話したことはあったけど、あんなに精悍な人だったとはね。意外だったけど面白かった」  試合を思い返すと、今回のMVPは間違いなく彼だった。彼は、記憶に残るようなファインプレーを幾つもやってのけた。何より、あのスーさんの球を1発で打ち返したのは大きい。 「でも、本当に悔しかったなぁ。あともうちょっとでつけ坊主の球打ち返せた気がするのに~」 「何言ってんだ。目瞑ってるようじゃまだまだだよ。な?」 「ですね」  つけ坊主とカリー伯爵は、さと子を見てニヤニヤと笑った。 「何よもう~!」  ムッとするさと子を見て、神様が高笑いした。つられてじゃがくんも笑っていた。歩く5人の影は、夕日に姿を照らされて色濃く映っていた。  家へと戻り、さと子は風呂を上がると料理を頂くことにした。両手を合わせて、何時ものように、「いただきます!!」をする。
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