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ハンバーグ男子こと、ハンちゃんと出会って以来、さと子はハンちゃんとばかり運動に励んでいた。気づけば、3日連続で1日3食ハンバーグを食べていた。もちろん、達海とランチを食べる今も。
「お前さぁ、本当にダイエットしてるの?」
「うん、してるよ? コレでも3キロ痩せたんだけどなぁ。分かんない?」
「へぇ。頑張ってんだな。じゃあとりあえずそれは良い。それより、最近ソレばっか食べてないか?」
さと子の大きな2段型のお弁当箱を見つめて言った。その中には、大きなハンバーグが入っている。
「そうだね。でも本当に痩せてるよ? ってか、運動してからじゃないと食べられないしね」
「運動してからじゃないとって?」
達海が疑問の目を向ける。さと子はしまったと視線を達海から逸らすと、はははと笑って誤魔化した。
「そう言う目標、ね?」
「あっそう。でも、同じ料理ばかりって言うのは見てるこっちからしてもちょっとな。たまには違う料理も食べたらどうだ? 気分転換にもなるだろうし」
「そうか~でも何かハンちゃんに悪いなぁ~」
「ハンちゃん?」
またもや失言をしてしまった。達海の目が鋭い。さと子はげらげらと笑い飛ばすと、達海の背中を叩いた。
「馬鹿ね~友達のことじゃない! もしかして焼いた? 焼いちゃった?」
そしてさと子は、3階全体に響き渡らせる勢いで笑い飛ばした。達海は、深いため息をついて、「ご馳走様」と立ち上がると笑い続けるさと子を置いて去って行った。
帰宅後、さと子は早速調理台に立って手を洗っていた。
「そうねぇ。たまには違う料理を食べたりしてこそ、改めてハンバーグを食べた時の喜び、そしてハンバーグへの愛情も増してくってものよね! よし、今日はステーキ作っちゃお。うひょー、ステーキ久々だぁ!!」
此処最近、ハンちゃんに会いたいこともあり、ひき肉ばかり買っていたが、実はハンバーグを作る前に買い置きしてチルドにステーキ肉を入れていたのだ。あまり放っておくと痛んでしまうかもしれない。丁度良い頃だろう。
分厚い肉に切れ込みを入れ、鼻歌を歌いながら肉を焼く。普段なら、焼き上がるのを待っている時間にお菓子を食べたりもするものだが、ハンちゃんとの出会い以来、1つの料理を人のように大切にするようになったのだ。お腹は鳴るが、我慢ガマン。口元から溢れるよだれを急いで拭った。
「出来た!!」
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