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昨夜の雨が嘘だったかのように、今日は太陽が燦々と輝いている。まだ眠りに付いている達海の肩をトントンと叩くと、達海は薄らと目を開けた。
「どう? 調子は」
とは聞いてみるものの、達海の顔はまだピンク色だ。恐らく調子は良くないだろう。
「有難う。昨日は助かった」
そう言いながら立ちあがった達海は、フラリと大きく上体を崩した。さと子が慌てて達海の体を掴まえると、布団に座らせる。
「今日は日曜日よ。私は休みなの。もし辛いなら、携帯で休みの電話入れちゃいな」
何時に無く優しいさと子。達海は小さく頷くと、さと子から携帯を返してもらい、上司に休みの連絡を入れた。
「ご飯食べれる? おかゆとかで良い?」
「ああ」
さと子は台所へ移動し、米を湯がく。達海は壁伝いに立ちあがり、何とかちゃぶ台へと移動してきた。
「寝て無くて良いの?」
「此処で食べたいんだ」
「そう。じゃあ、テレビ付けるね」
テレビの電源を入れると、子供向けの番組が始まった。綺麗なお兄さんお姉さんが小さな子供と歌をうたったり、クイズをしたり。若干異様なのは、小さな子供の大喜利だった。当然4~6歳くらいの子供なので、言っていることはとんちんかん。何故この年の子供に大喜利をさせようと思ったのだろう。
兎にも角にも、子供が映っていると妙に和む。穏やかな時間が経過し、さと子は達海の前におかゆを置いた。他人に出した料理だからか、おかゆは米限定なので主食と捉えているのか。おかゆが人に変身することはなかった。
「いただきます」
達海はおかゆを口に含んだ。そして1つ頷く。
「温かい」
「良かった。でもアレでしょ、おかゆじゃ物足りないでしょ」
「良いや。少なくとも、うちの食事に比べれば」
テレビに映る幸せそうな親子を見つめ、寂しそうに達海は言った。
「……親御さん、あまりお家にいなかったの?」
おかゆをすすりながら、達海は頷いた。
「仕事やら付き合いやらってな。親父は働いてるからまだ理解出来た。仕事をしている今なら尚更。けど、母親だけは許せない。何時も母親同士の付き合いとか言って、俺を置いて遊び放題だった」
「もしかしたら、本当に付き合いだったかもしれないんじゃ」
「見たことがあるんだ。昔、母さんが外で違う男と会ってるのを」
暫しの沈黙が流れた。聞こえる音は、テレビの向こうのはしゃぐ子供の声だけだ。
「……そっか」
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