75人が本棚に入れています
本棚に追加
/140ページ
さと子は切なげに達海を見た。
「1人家に残されて、学校行く前も帰って来る時も、あるのはカップラーメンだけ。たまに外食へ連れて行ってもらったりもしたが、母親の手作りなんて殆ど食べたことが無い。だから、こう言う料理、好きなんだ。特に、お前のは」
達海はおかゆを平らげると、さと子に空になった器を渡した。さと子は笑顔で受け取り、おかゆをついで渡す。
「沢山食べて。元気なったら、もっと味の濃いの作るからね!!」
さと子は明るく達海に言うと、達海は目を閉じて噛みしめるように頷いた。
最悪だ。今日は1日中晴天のはずだったのに、急に雨が勢い良く降りだした。それも、雷と言うオプションを付けて。
達海の体調こそ大分良くなったものの、これでは家に帰れない。しかしまぁそれは良い。それよりも問題なのは……。
「カップ麺しか、無い……」
達海からあんな話を聞いて、カップ麺を出すのはあまりにも酷すぎる。こんな時に限って米はおかゆに全部費やしてしまい、親から送られてきていた乾麺も知り合いにプレゼントしてしまったせいで食材と言う食材が何も無い。
「ああう! どうしようどうしようどうしよう!!」
「どうかしたのか?」
「キィエエエエッ!!!」
「え?」
急に声をかけられて動揺したさと子は、大きな悲鳴を上げた。達海がギョッと1歩後ずさったが、さと子の手元にあるカップラーメンを見ると、事態を察した。
「もしかして、それしか無いのか?」
さと子は面目なさそうに俯いた。達海はさと子からカップラーメンを取ると、首を横へ振った。
「別に、カップラーメンが嫌いなワケじゃない。ただ、1人でインスタントを食べるのが苦手なんだ。お前がいるなら構わないよ」
「何よしおらしい」
2人はちゃぶ台に座ると、ポットの湯をカップラーメンに注いだ。3分後、両手を合わせると2人はカップラーメンをすすった。テレビを付けて無かったこともあり、静かな時間が流れる。
今まで食べ物男子達とは2人きりのこともあったが何かと慌ただしかったり、騒がしかったりとしてあまり相手を意識することは無かった。それだと言うのに、達海といると妙に意識してしまい、ドキドキする。時々目が合うと、その度に逸らしてしまい、何を離せばいいのか迷ってしまう。
「さと子」
最初のコメントを投稿しよう!