17:カップ麺と幼少期

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 達海は仕事カバンを取り出すと、中から手帳を取り出した。それを開くと、挟まっていた写真をさと子に見せる。映っていたのは少年だ。それも、さと子に似てぽっちゃりな。 「……もしかして、これ達海?」  達海が頷いた。この頃が小学生? 体格が全くそれを感じさせない。中学生と言われても普通に信じてしまいそうだ。目も今に比べて肉で細く、頬やお腹もぷっくりしている。 「本当に、カップ麺しか食べてない?」  さと子の問いに、ごもっともと言わんばかりに達海は笑った。 「ああ。カップ麺が無限大にあったし、外食でも結構食べたからな。お前と一緒で、ストレスが溜まると食に逃げるタイプだったんだ」 「そうだったんだ。それなのによく痩せたね、偉いよ」 「いいや。それで、このボタンはお前と出会った時に落とした物なんだ」  紫色の服を着た、もしくはボタンだけ紫色の服を着た、子供力士みたいな少年。さと子は幼少期を必死に思い出す。  やがて、公園で出会った彼とそっくりな少年のことを思い出した。名前は聞かなかったが、彼とボール遊びをしたことを覚えている。そして、このボタンが彼のお腹から弾け飛んだことも。 「ふふ、思い出したかも。でも、私名前言ったっけ? どうして私がその子だって分かったの?」 「それは……お前が友達から何度も名前を呼ばれてたから」  1度ボール遊びをして以来、記憶が正しければ達海とは遊んだことが無い。しかし、達海はさと子のことを遠くからずっと見つめていたそう。 「一時の幼い恋心だと忘れかけていた。けど、会社で悩んでる時にお前に声をかけられて、その上、当時のあの子だと知った。……正直、あの時からお前のことがずっと好きだった」  達海が本音を口にした瞬間、さと子の顔が赤くなった。達海は少し伸びたカップ麺をすすり、水を1口含む。まだ残っているカップ麺を横に置くと、さと子とは違う方向を見た。 「本当はいるんだろう? 神様」  え? と口を開ける。達海の向く方向を見ると、その場に神様が現れた。 「やれやれ。バレてしまったか」 「え!? あ、あの。どう言うこと?」 ――現在の体重、66キロ
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