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「暇だからってくっつかない。そろそろハンちゃんも来る頃よ」
さと子に指摘され、チェッと舌打ちをするとスーさんは離れた。あまりに積極的なスーさんの姿に、男性は戸の隙間からあわあわと口を開けて震えるばかりだ。
更にハンちゃんも現れると、さすが有名な肉2人。ボーダーの服に青いオーバーオールを着る自分とは違い、彼等には華がある。これは気付かれないわけだ。男性はため息をつく。
「んじゃ、早速ひとっ走りしに行くか」
「うん」
「あ、あの!」
ぞろぞろと外を出る為、置いてかれないように急いで男性も飛び出す。扉が閉まりかけたので、男性は必死にドアノブを引いた。
「あれ?」
さと子が違和感を感じ手を離すと、強く引っ張っていた反動で男性は扉に挟まれ、紙のようにペラペラになってしまった。
「誰もいないなぁ。何だか扉が強く引っ張られた気がするんだけど……」
「もしかしてそれってコイツじゃねぇか?」
不思議そうに首を傾げるさと子に、スーさんが言った。そして、人差指を倒れ込んだ男性へと向ける。
「おや、コイツ見たことあるのう」
「あーあるな。誰だっけ」
起き上がってすぐこの突き放されよう。か弱い男性のハートに、言葉のナイフがグサグサと刺さる。
「もしかして、お皿の中に無かったサラダ?」
さと子の言葉に、かろうじて男性は頷いた。
「良かった! こんなところにいたんだ!!」
良かった? さと子の言葉に、男性は首を傾げる。
「今まで何処行ってたの? 君達も人の姿をしてる以上何処へ行っても止められないけどさ、あんまり1人で出かけたら危ないから。心配してたんだよ」
思わぬ言葉ばかりがさと子から出る。男性は心が揺さぶられ、何も答えられずにいた。
そんな男性に手を差し伸べると、さと子は言った。
「手伝ってくれませんか? 私のダイエット」
こみ上げる色んな感情で詰まった言葉の代わりに、男性はさと子の手を握って頷いた。神様や、肉料理の2人も微笑ましそうに見る。
「有難う、サラダ!」
曇りの無い笑顔で言われたことが嬉しかったものの、他の皆と違って愛称ではないことが気がかりでしか無いサラダであった。
――現在の体重84キロ
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