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「セイロン島のアールグレイ。いい香りだろ?俺の一押しさ。クッキーは、ここから少し行ったところのパン屋さんのなんだ」
誰もそこまで話せとは言っていないが、変な薬などは入っていなさそうである。植物性の毒であれば、花の属性を使って判断できるのだ。
奏太は一口その紅茶を啜った。
「……」
予想以上においしかった。彼は紅茶の淹れ方がうまいらしい。
「まず改めて自己紹介をしようか」
彼はそう切り出した。
「俺はさっきも言った通り、ここの生徒会長で、雷属性のゲートを持つ。名前は、稲荷来人。ここの二年になる」
「まだ一年」
「四月になったら二年生さ。上下関係は好きじゃないから、呼びやすいように呼んでくれて構わない」
「……」
「霧崎くんの自己紹介が欲しいな」
笑いかけてくる来人に奏太はしかめっ面を返す。名乗ってすらいない自分の名前を言い当ててきた人間が要求するものには思えない。どうせ調べはついているくせに。しかし、ここで黙り込んでも来人は自分を解放してはくれないだろう。
「俺の名は霧崎奏太。氷と風の二重ゲートと、花と音の二重属性。合わせって四つの属性と、魔力眼を持ってる。効果は属性透視。ゲートの形は槍。攻撃スタイルはスピードのバランス型。ガイスト実践は過去に何度もある」
「ありがとう。調べ通りで助かるよ」
皮肉で言われていることは百も承知。このようなことで感情を高ぶらせたりはしない。
いったいどこで田舎の孤児院で育った一人の人間について、それも周りに気配がないか最深の注意を払って力を使用していたはずなのに、どこから情報を拾ってきたのやら。まさか、能力眼についてまで調べげられてるとは少し驚く。
「で? 俺に話って?」
面倒事は早く済ませてしまおう。このゲート使いとは少なくとも二年の時を過ごさなければならないようだが、深く関わり合いたくはない。ゲート同士が絡んでろくなことが起きたためしがないと文献には書いてあった。なら自分もそれに倣って当たらず触らずに過ごしていくべきなのだろう。むこうにその気がないなら話は別になるが。
「まぁ、単刀直入に言えば、君には生徒会に入ってほしいんだよ」
「?」
一瞬思考が停止した。
学校のことをまだ何も知らない入学前の新入生に対して生徒会へのスカウトを行うとは何事か。
問題はそれよりも、彼が自分とかかわる道を選択したという事だ。
奏太の答えは決まっていた。
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