翠玉の目覚め

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「……」  彼はそれらに冷たい視線を投げかけた。  彼を取り囲んだ影――それはとてもこの世の物とは思えない異形だった。まるで、様々な生物を継ぎはぎにして作った人形のような。顔は一応あるが、もちろん理性や知性があるような顔とは言えない。まさに異形、化け物、怪物。そういった言葉がよく似合うものたちに、細身で小柄な美しい少年が囲まれていた。  彼は無言のままニットの袖をまくった。その細い両手首には何かの紋章が刻まれていた。  うっすらと光を帯び始めたそれに導かれるように冷たい風が吹き抜ける。  彼が紋章に触れると、光は一層強くなり、紋の中から何かが出てきた。  少年はそれを引き抜き、腕を振り上げ、少年を鋭い爪で切り裂こうとする化け物に突き刺した。  あたりに充満する鉄のにおい。飛び散る赤。  少年は動かなくなった化け物からそれを抜く。  彼が両手にしていたものは、槍だった。  まるで、西洋の美術品のように美しい光を放つ、少々短めではあるが、とても鋭い槍。その切っ先についた赤を見て、少年は目を細めた。そして、その口の端を吊り上げながら地を蹴った。  次の標的になったのは、彼の一番遠くにいた異形。振り下ろされる爪を上に避け、その腕を踏み台にして、彼の体調の二倍はあろう異形を飛び越え、背後をとる。そのまま、異形の背を頭部から直線に切り裂くと、異形は耳障りな声ともいえない声で叫ぶ。 「うるさ……」  ヘッドホンをしていた少年は顔をしかめた。しかし、一撃で仕留めなかった自分が悪いのだと思い、異形の喉と思われる部分を突き刺し、それを薙ぎ払って首を飛ばす。  二体の怪物を難なく倒した彼に降りかかる三つの影。  三方向から一気に攻められている。だが、彼は全く動じない。  彼があきれたようなため息とともに、槍で地面を突くと、彼を中心に強風が吹き荒れる。それに吹き飛ばされた異形の体には、無数の針のようなものが刺さっていた。それは、彼が氷で作り出した小さな針。強風が止むと、彼は一つ指を鳴らした。瞬間、怪物たちの体内から、きらめく水晶の華が咲く。今までと比べ物にならない鉄くささの中にたたずむ一人の小柄な少年は退屈そうに槍を薙ぐ。美しかった槍は光の粒となって、また彼の手首の紋章に吸い込まれていく。  彼は、酸化し始めた異形の体液で汚れた顔をニットの袖で乱暴に拭うと、ため息をついてどこかへと歩き出した。
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