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しかし、その爪は少年に届くことなく地に落ちた。
間もなく聞こえた、風切り音と、一人ぶんの足音。
「だめじゃないか、最後まで気を抜いちゃ」
少年にかけられた声に彼は振り返る。そこにいたのは、赤茶の髪と金色の瞳を持つ青年。黒いスラックス、白いワイシャツ、藤苑高校の胸章が入った紫のラインが入っている白いブレザーを着こなしている彼がしている緑色のネクタイは、彼がこの高校の二年生である証。右手には赤い液体を滴らせる日本刀を持っていた。
「見てたなら最初からあんたがやれよ」
少年は青年を睨む。青年はそれを気にすることなく少年に話しかける。
「でも、俺がやるよりも奏太がやったほうが早いだろ?」
奏太と呼ばれた少年は何も答えない。それを茶髪の青年は肯定とみなしたようだ。
「まぁ、そう睨むなよ」
「……あんた、こんな時間にこんなところにいていいのかよ。生徒会長さん」
「なにせ、会長だからね。この学校じゃ、俺がルールなんだよ」
「……知ってる」
奏太は再び歩き出す。
吹き抜けたのはこの時期とは思えない冷たい風だった。
黒髪をその風に靡かせる彼の名は霧崎奏太。藤苑高校の新入生である。その証拠に彼のネクタイは赤い。そして、ともにいる茶髪の青年は、藤苑高校の二年生にして生徒会長を務める稲荷来人である。
この藤苑高校は、普通の高校ではない。そう、先ほど、奏太や来人が見せたものを実践できるようにするための学校である。先ほど、彼らが使った力、属性の操り方を学び、戦術を練り、武器を振るう。
この属性という力は、すべてで14ある。火、水、雷、風、氷、土、空、月、音、幻、光、闇、狭間である。
現在の日本人でこの力を使える者はかなり限られている。そして、その限られた才能を持つものはみな、この藤苑高校、もしくは京都に本部を置く楼苑高校に入学させられるのだ。
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