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奏太はその政府への就職を望んでいるかと言われれば決してそうではない。誰かに従うのを好かない人間だった。故に、稲荷来人にも決して従おうという姿勢を見せない。むしろ、警戒心すら抱いている。
奏太は基本的に他人とコミュニケーションをとろうとはしない。クラスにも数える程度しか顔を出していない。
この学校はその個人に宿る属性によってクラスが分けられている。しかし、奏太に宿る属性は風と氷と花と音。一人に宿る属性は一つ。稀に二つの属性を持つものがいる。だから、奏太は異常なのだ。異常すぎるのだ。一応今現在、奏太が属しているクラスは風だ。
クラス分けは行われていようと、奏太レベルになれば、授業など必要ない。
それは、さきほど彼が使った力と関係がある。
奏太が先ほど使った力は属性の類ではあるが、属性そのものではない。
その力は『ゲート』と呼ばれている。ゲートは、宿ったものの一部に紋章を表す。そう。奏太の手首にある紋章こそがそれなのだ。奏太はそれを二つ持っている。
これは奏太が二重属性であることを表しているだけではないのだ。
ゲートという力は、いわば、属性の王にあたる証なのである。この力をもってすれば、米軍のどんな兵器だって瞬間的に消すことが可能だろう。それを二つ体に宿す意味は、彼が現在存在する日本人の中で、もっとも危険とされるということなのだ。たとえ、ゲートが二つなくても、ゲートというのは危険視される存在なのだ。だから、ゲート使いたちはその証を隠し、息をひそめる。奏太が常にブレザーを着用しない理由はそこにあった。動き安く、手首を隠せるもの。
奏太がこの学園に入学してきたのはちょうど一か月前である。しかし、この稲荷来人という青年に出会ったのはこの学校の入試の時であった。入試といえど、生徒にどれほどの力があるかと、それぞれの属性を分けるための簡単なテストであったのだが。
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