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「誰だ!このコーヒーを淹れたヤツは!!」
鈴木部長が怒鳴り散らしている。
「すみません部長!!不味かったですか?」
「お前か中村!まったく仕事もろくに出来ないド新人が。コーヒーもまともに淹れられんのか。俺はブラックしか飲まないって言ってあるだろ!もういい誰か…おい高橋お前でいい。コーヒー淹れて持って来い。ブラックだぞ!!」
新人の中村はブラック派の部長のコーヒーに砂糖を入れてしまっていたのだ。
「あーあやっちゃったね。気にする事ないよ中村さん」
「高橋先輩すみません。私がドジだから……」
「いいのよ。私も部長のパワハラにはムカついてるから!何か仕返しでもできたらいいんだけど」
ハーックション!!
部長室からは花粉症らしい部長のくしゃみが聞こえてきた。
「そうだ!いい事を考えた」
高橋は一番上等なお客様用のカップを出した。
「特別感を演出して……」
そう言いながらインスタントコーヒーをスプーンで5杯カップに入れる。
「先輩?入れ過ぎでは……」
「ブラックがいいんでしょ?うーんと真っ黒にしてやればいいのよ」
中村はそばに置いてある台拭きが気になった。
まさか雑巾のしぼり汁でも入れるつもりでは……。
高橋が台拭きに手を伸ばそうとした時、二人の足元にカサカサと動く黒いものが見えた。
高橋はその黒いものを素早くヒールで踏みつけた。
急所は外したらしく、瀕死状態ながらもヒクヒクと動いている黒いもの。
それをネイルで器用につまみあげ、真っ黒なブラックコーヒーの中に入れた。
「できたよ!部長の大好きなブラックコーヒー。中村さん、ほら早く持って行って!」
「え、でも指示されたのは先輩ですよね。……お断りします」
「仕方ないわね、まあ見てなさい。これはね、パワハラ上司への実験なのよ」
高橋は足取りも軽くコーヒーを持って部長室へ。
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