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それから、当然ながらに俺は、慌てて不動産屋に電話をした。
「あっ、あの、メールを頂きました奥村ですが、
アパートの更新って、今からじゃ間に合わないですか?」
確かに、焦っていた。
だが、一応一人前の社会人が、
アパートの名前も告げずに、あまりにも唐突だったとは思う。
しかしそこは、不動産屋もさすがにプロ。
少し待つようにと言われて程なく、俺の住むアパートを探し当ててきた。
「あぁ、えっと、ひと月以上前に
更新手続きのご連絡をしたと思うんですけどね」
電話の向こうからは、ちょっと渋い声が投げられる。
そして、素直に詫びた俺の耳に、更に渋くなった声が告げてきた。
「実は、更新手続きがなかったので、
もう次の入居予定の方が決まってるんですよ」
なんか、大きな鐘の音でも脳内に響いたような感じがした。
しかも、そんな衝撃にも負けぬほど淡々とした声が、更に追い打ちをかける。
「ですので、17日までには、どうしても空けて頂かないと困るんです」
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