58人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんにちは。今日は来てくださって、ありがとうございます」
なぜか開口一番お礼を言われて、
本来礼を言うべき立場は俺だろうと、内心首を傾げる。
だが、それはそっと胸の中に仕舞い込み、
俺は、一応挨拶と共に常識的な再確認を口にした。
「こんにちは。こちらこそ、ありがとうございます。
でも、あの、こんな風にノコノコ出て来ていながら言うのもなんですが、
本気ですか?」
おずおずと尋ねると、案内するように歩きだした彼女は
笑顔を向けて頷いてくる。
「もちろんです。奥村さんさえ宜しければ、シェアして頂ければ嬉しいです」
やっぱり俺って、男としてカウントされないのか。
寂しさ半分、くやしさ半分な気分になるが、
それでも改めて確かめずにはいられない。
「でも俺、一応、男ですよ?」
しかし彼女は、昨日と同じことを笑顔で繰り返した。
「はい、分かっています」
「だけど、なんていうか、困った事にはなりませんか?
その、ご両親とか、会社とか、世間とか……」
ところがそれに、またしても彼女は細く笑った。
最初のコメントを投稿しよう!