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声には出さず呟きつつ、やや呆然と彼女の後に続く。
すると、正面玄関を入って間もなく、ホテルの受付のような場所から
中年の男性が、にこやかに彼女に声を掛けてきた。
「お帰りなさいませ、北原さま」
もちろん彼女は、当然ながら顔見知りらしく、気軽に挨拶を返す。
「ただいま、堀池さん」
そして程なく、エントランスへと入ると、
エレベーターを待ちながらぼんやりしたままの俺に
彼女が、勝手に説明を始めた。
「ここには、あの堀池さんを含む六人のコンシェルジュがいます」
「コ、コンシェル、ジュ……?」
なんか思いっきり尻込みしそうな事をサラリと口にしながら、
彼女は、扉を開けたエレベーターへと乗り込んでいく。
「はい。あの方々は、それこそ宅配荷物の一時預かりから
困った緊急時の対応まで、24時間体制でサポートしてくれるんです」
おい、おい、おい――。
ここは、お大尽館ですかぁ。
なんか、別の意味で俺の足が震えてきそうになる。
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