一夜 再会

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ーーーーー つんつん、と弁当の中にある唐揚げを突いて弄ぶ羽梛に、向かいに座る澪が不思議そうな顔をした。 「どうしたのー、ハナ。食欲ない?」 「え?いや、そんなことないよ。なんで?」 「なんでって、さっきからその唐揚げ突くだけで食べようとしないから」 言われて気付く。 すでに衣がボロボロになりつつあるそれに、羽梛は慌てて口に運んだ。 「どうしたのよ、浮かない顔して。もしかして来週にある読み聞かせ会で気になることでも?」 「んーそれは大丈夫。…さっきね、図書館を利用しに来てた人に言われたことが気になって…」 「気になること?」 うん、と頷き、羽梛が手首にある数珠を撫でる。 それが彼女にとってとても大切なものということを、澪はよく知っていた。 何せ高校からの付き合いなのだ、伊達に親友を語ってはいない。 「…何を言われたの?」 何か、ではなく何を、と言ってるところからして、すでに彼女は確信していた。 その利用者が羽梛の気分を塞いだことを。 「…限界だって。この数珠のことだと思うんだけど…何が限界なのかわからなくて。ゴムが緩んでるわけでも切れ目が入ってるわけでもないし、見た限りではそんなことないのに何が限界なんだろ」 澪もその言葉に改めて羽梛の数珠に目を向けるが、彼女の言う通り数珠に異変があるようには見えない。 ただの嫌がらせか何かだろうか、と首を傾げた時、羽梛が小さく声を上げた。 「あ…!」 店の外を眺めていた羽梛がわずかに腰を上げる。 が、すぐに着席した。 「羽梛?」 「今いたの、さっきの話の人。あっちって大学の方…大学生?」 自問自答するように青年が消えた方を見ながら呟く。 見た感じは確かに若かった。
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