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「…ま、いっか」
とりあえず、考えても答えは出ない。
知らないのに答えなどあるはずがないのだ。
羽梛は残していたデザートに手を伸ばした。
「いっか、って…いいの?」
「考えても答え出ないし、図書館の利用者ならまた会うこともあるでしょ。見かけたら聞いてみる」
「そう?」
「うん」
何気に彼女はこういう所さっぱりしている。
その顔には確かに先ほどの憂いている様子は消えていて、澪もそれ以上考えるのはやめた。
何かあれば彼女から話してくれるだろう。
それから2人は、女性ならではの話に花を咲かせ、休憩時間を過ごした。
「…そして今日もこの時間、と」
終電に飛び乗り、最寄駅に着いたのはすでに日付も変わった頃。
ここ最近は、来週に控えた読み聞かせ会の準備のために閉館した後はかかりきりだった。
読み聞かせ会とは、小児病棟に入院している子供達のために図書館の職員が絵本や紙芝居、人形劇などを催す会のことだ。
毎年交代で参加するのだが、今年は見事に羽梛が担当に選ばれた。
選ばれたメンバーで何をするか、どんな内容にするか、全てを決めて準備をしなければならない。
今は大詰めで、小物の製作などで居残りしていた。
「こっち方面は私1人だけだから仕方ないんだけど…やっぱこの時間帯は心細いなぁ…」
駅前は栄えていてまだ人通りもあるが、一歩横道に入ってしまうとそこは住宅街で一気に明かりも人の気配も少なくなる。
とぼとぼと足を動かしながら携帯を開く。
LINEが二件ほど入っていて、一件は澪、もう一件は今回の準備メンバーの1人である後輩からだった。
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