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中世ヨーロッパ。
それは社会が大きく成長を遂げた時期でした。
農業技術の発達に伴う人口増加。
都市の発達とともに物の行き来が盛んになり、
商業の要としてギルドやハンザ同盟などが結成されました。
しかし、成長には痛みが伴います。
華やかな発展の一方では必ず軋轢が生まれます。
貴族の間での利害対立から起こる戦争。
領土拡大の為の十字軍遠征。
多くの人と物が都市に出入りをしました。
そしてそれは、
とうとう招かれざる客をも連れてきてしまいました。
黒死病。
ヨーロッパの人口の実に3割を殺したと言われる、黒い病い。
一度かかれば、家族にさえ見捨てられ、
苦しみの中で腐り果てるしかなかったと聞きます。
その病に立ち向かい、戦った賢女たちがいました。
賢女はその知識と経験から得た治療を施し、
命を救いました。
また人々に見捨てられ、
死の絶望に立った者にも人として接し、
最後を看取ったともききます。
生と死の垣根、その垣根で命を差配する女性。
その女性たちは、ドイツの古い言葉から、
魔女(垣根の上にいる女)と呼ばれました。
ですがその行為は、
決して良いこととは考えられなかったようです。
黒死病にかかった人が生き延びれば、
その人が再び病を撒き散らす。
人々はそう考えました。
魔女はその手助けをしている、
悪魔と密約を結んでいると、
そう考えられるようになりました。
魔女は邪悪な存在として糾弾され、
殺されるようになりました。
人々のために尽くした魔女は、
人々に殺されました。
生き残った魔女はその存在を隠し、
歴史の表舞台から姿を消しました。
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