3人が本棚に入れています
本棚に追加
湧き上がる感情が掠れた音になって、喉から漏れた。
目を><にして、拳を握って両腕を空に突き上げた。
「着いたー」
森の中を彷徨うこと5時間。
その末に目的地に辿りつき、私は歓喜した。
長い旅路だった。
お昼頃に森に入った時は、ピクニック気分だった。
全てが新鮮で楽しく思えたのは最初の30分だけだった。
次の30分で冷静を取り戻し、その次の30分で不安が頭を霞めた。
歩けど歩けど木、木、木。
変わっていくのは気持ちと道幅だけ。
どちらもか細くなって行くばかりだった。
でも道幅は消えてなくなったが、
私の気持ちは、なんとか消えはしなかった。
心が折れて、膝を折った。
不安と恐怖が冷たく硬い爪を突きたて、精神を削り下ろした。
それでも自分を励まし、立ち上がり、歩き続けた。
そうして今やっと、目的地に到着した。
目の前に広がるのは茜色の空。
夕日は木々の間に沈み、殆ど隠れてしまっている。
振り返れば、夜はすぐそこまで来ていた。
あと少し遅かったら、夜の森に閉じ込められる所だった。
本当に危機一髪だった。
「よくやった。よくやった私」
突き上げた両腕を、畳みながら体に惹きつける。
拳を胸につけて、目を強く瞑り、
達成感を噛み締めた。
最初のコメントを投稿しよう!