古城と魔女の宴

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湧き上がる感情が掠れた音になって、喉から漏れた。 目を><にして、拳を握って両腕を空に突き上げた。 「着いたー」 森の中を彷徨うこと5時間。 その末に目的地に辿りつき、私は歓喜した。 長い旅路だった。 お昼頃に森に入った時は、ピクニック気分だった。 全てが新鮮で楽しく思えたのは最初の30分だけだった。 次の30分で冷静を取り戻し、その次の30分で不安が頭を霞めた。 歩けど歩けど木、木、木。 変わっていくのは気持ちと道幅だけ。 どちらもか細くなって行くばかりだった。 でも道幅は消えてなくなったが、 私の気持ちは、なんとか消えはしなかった。 心が折れて、膝を折った。 不安と恐怖が冷たく硬い爪を突きたて、精神を削り下ろした。 それでも自分を励まし、立ち上がり、歩き続けた。 そうして今やっと、目的地に到着した。 目の前に広がるのは茜色の空。 夕日は木々の間に沈み、殆ど隠れてしまっている。 振り返れば、夜はすぐそこまで来ていた。 あと少し遅かったら、夜の森に閉じ込められる所だった。 本当に危機一髪だった。 「よくやった。よくやった私」 突き上げた両腕を、畳みながら体に惹きつける。 拳を胸につけて、目を強く瞑り、 達成感を噛み締めた。
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