古城と魔女の宴

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後ろ手に扉を閉めながら、周りを観察し始めた。 エントランスは円形をしていた。 正面には階段があり、壁に沿うように左右に別れて、 上の階へと続いている。 階段に沿って上を見上げると、 各階の廊下が円形状に張り出している。 下から1つ、2つ、3つ、 この階を含めて4階建てのようだ。 吹き抜けになっていて、天井はかなり上の方だ。 天井もやはり円形になっていて、 幾何学的というのだろうか、 複雑な模様が規則正しく描かれていた。 まるで万華鏡を覗いているようだ。 その美しさに、思わず、わぁと声が漏れそうになる。 「天井に、何かいた?」 その声に、心臓が太鼓を打った。 落ち着けと3回唱え、笑顔を作り、声の方を振り向く。 「いえ、とても綺麗だな、と」 知らない人と話したのは本当に久しぶりだった。 緊張で手に汗が滲んだ。 「面白い人」その娘はそう言って笑った。 「色々な人が来たけど、このお城に入って一番に、  天井に感動したのは貴女だけだよ」 その娘は可愛らしかった。 私よりも少し小さい身長。 整った目鼻に、鈍色のミディアムヘア。 その容姿は西洋人形のようだった。 ざっくばらんな言葉遣いと、 幼い容姿が不釣り合いだ。 それはまるで、 小さな子が頑張って背伸びをしているようで、 なんだか面白かった。
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