古城と魔女の宴

7/48
前へ
/141ページ
次へ
エントランスでは、さっきよりも人が増えていた。 だが何かをやっている様子はなかった。 時間は、まだ大丈夫なようだ。心中で胸をなでおろす。 私は居心地の良さそうな壁を見つけて歩いていき、 そこへ行き背を預けた。 誰からも近くなく、 でも耳をすませば何を話しているかは聞こえる、ちょうどの距離だった。本当に良い場所だと満悦する。 色々な人がいた。 香を焚きながら、その香りについて話す人。 タロットカードを広げ、話をするもの。 怪しげな薬や、薬草のような物を出しているもの。様々だ。 色々観察をして、わかったことが2つあった。 1つ。フロアにいるのは私を含めて10人、ということ。 2つ。私の入っていける居場所は、無い、ということ。 既にグループができていて、固まっているようだった。 その中に入っていく勇気や、話術や押しの強さは私にはない。 情報交換をするために参加したのに、 それが早くも絶望的になっている。 始まる前から、後悔の念がよぎる。 私は人見知りだ。それも重度の。 その原因は多分、人と話ができないことにある。 私は嘘が苦手だった。 だから、人と話すことが出来なかった。 興味のない話に、あたかも関心があるように 「うんうん」と頷けるほど、 嘘に対して寛容ではなかった。 嘘をついて相手を欺くのは不誠意でしかない。 「正直でありない」そう教わって育った私には、 そんな事はできなかった。 私が嘘を言わずに、心から話せる話題は。 「魔術」 その単語に集約される。 だがそれが、みんなと私をより遠ざけていた。
/141ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加