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エントランスでは、さっきよりも人が増えていた。
だが何かをやっている様子はなかった。
時間は、まだ大丈夫なようだ。心中で胸をなでおろす。
私は居心地の良さそうな壁を見つけて歩いていき、
そこへ行き背を預けた。
誰からも近くなく、
でも耳をすませば何を話しているかは聞こえる、ちょうどの距離だった。本当に良い場所だと満悦する。
色々な人がいた。
香を焚きながら、その香りについて話す人。
タロットカードを広げ、話をするもの。
怪しげな薬や、薬草のような物を出しているもの。様々だ。
色々観察をして、わかったことが2つあった。
1つ。フロアにいるのは私を含めて10人、ということ。
2つ。私の入っていける居場所は、無い、ということ。
既にグループができていて、固まっているようだった。
その中に入っていく勇気や、話術や押しの強さは私にはない。
情報交換をするために参加したのに、
それが早くも絶望的になっている。
始まる前から、後悔の念がよぎる。
私は人見知りだ。それも重度の。
その原因は多分、人と話ができないことにある。
私は嘘が苦手だった。
だから、人と話すことが出来なかった。
興味のない話に、あたかも関心があるように
「うんうん」と頷けるほど、
嘘に対して寛容ではなかった。
嘘をついて相手を欺くのは不誠意でしかない。
「正直でありない」そう教わって育った私には、
そんな事はできなかった。
私が嘘を言わずに、心から話せる話題は。
「魔術」
その単語に集約される。
だがそれが、みんなと私をより遠ざけていた。
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