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「まじか! えっ、本当? こんな偶然ある!?」
蒼佑の珍しく張り上げた声で現実に引き戻された。
「すごい偶然! ねえ、瑞樹と百合子ちゃんって仲いいの? 高校のときどんな感じだった?」
怒涛の質問責め。どうした。蒼佑、お前、普段そんなテンション高くないだろ。
「どんな感じって言われてもな……普通?」
「普通ってなんだよ、普通って! 普通の中身を聞いてんの!」
「んー……」
「で、仲はいいの?」
矢継ぎ早に言葉が返ってくる。なんだよ、気にしてるってレベルじゃないじゃん。ゾッコン、てこういう状態を言うんだろうなとふと思った。
「んー。普通?」
「もう! なんだよ、さっきから普通普通って。何か言えない理由でもあるわけ?」
一瞬、冷やっとしたけれど、何食わぬ顔で続けた。
「別に何もねえって。」
「えー、本当だろうなー?」
「ほんとほんと。そんなに気になるんなら、自分で聞けばいいだろ。お前、一緒に飲みに行ったんだろ?」
「それができたらとっくにしてるよ。連絡先聞けなかったの。なんか、緊張しちゃって……。後悔先に立たず、ってね」
「ふはっ。冷静に自己分析してら」
「そういうわけでさ。瑞樹お願い! 百合子ちゃんに連絡してみてよ。三人で飲みに行こ!」
「……三人て誰とだよ」
「百合子ちゃんと、俺と」
「百合子と蒼佑と?」
「瑞樹だよ! 他に誰がいるのさ。なあ、お願い。友達だったら連絡先、知ってるでしょ? な、瑞樹~、頼むよ」
「……しばらく連絡とってねえからな。番号とか変わってなけりゃ、できないこともねえけど。無理だったら悪い」
「うわ、ありがとう瑞樹~~!」
抱きつかんばかりの勢いで顔を近づけてくる蒼佑。素直なやつだ。釣られて俺も笑みを浮かべた。
「やめろよ。俺、そういう趣味ないんだけど。俺は女が好きなの」
「おれだって女の子が好きだよ! 柔らかくていい匂いするし……」
「ふっ、蒼佑の趣味は聞いてねえわ」
「ははっ。なんだか今日は飲みたい気分! よーし、瑞樹! 今夜は飲み明かすぞ~! かんぱ~い!」
「はいはい、乾杯」
カチン、と軽快な音を立てて酒を酌み交わす。
面倒ごと引き受けちまったな、と億劫になりながらも、同時に、百合子に連絡する口実ができたと少しばかり胸を高鳴らせていた。
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