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赤ペンで点数が書かれたテスト用紙を、暁が端のようにヒラヒラと降る。
「俺がんばっちゃったよ。喜んでほしかったから」
そう言って照れ臭そうに笑った。最初のときのように、射るような眼差しで碧を見たりはしなくなっていた。代わりに、優しい目をするようになった。
「ありがとう」
そう囁いて身を寄せると、碧、と呟いた彼がぎゅっと抱きしめてくる。その抱きしめる強さと伝わる熱の高さに、碧は慌てて身を引いた。
「だめだよ暁、ここ学校なんだから」
おもわず先生みたいな口調で――いや、実際先生なんだけど――言ってしまうと、案の定気に食わなかったようで、暁は強い力で碧の腰を引き寄せた。見た目は華奢なのに、どこにこんな力があるんだろう。
「碧」
有無を言わせない口調。私もそんな言い方ができれば、授業中に騒ぐ生徒たちが静かになるのかな。
なんて、恥ずかしいから余計なことを考えてごまかす。キス。唇の端から始まって、だんだん深くなる。
暁ってば、歳の割にキスがうますぎる。
どうしてなの、と後でからかってやろう。そんなふうに思いながら両腕を首の後ろに回したとき。
ガラッ。
ドアが、開いた。
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