最悪の再会

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八年前、突然教師を辞めた碧を、両親は当然心配した。学校でなにかあったの、とまるで不登校の子どもに聞くように何度も尋ねられた。予備校の講師になってからも、帰省するたびにしばらくはなにか言いたそうな顔でこっちを見ていた。  心配をかけたのだ。わかってる。  目を閉じる。きょう何日だっけ、と考えて、家賃の引き落としまでの日数を計算する。  わかってることはひとつ。ここでダラダラしていても時間は過ぎていくばかりだということだ。  起き上がって、就職サイトを見ようとしたとき。  手に持っている携帯が振動した。慌てて表示名を見る。知らない番号だった。  もしかして、どこかの人事担当かもしれない。ここ半年は知らない番号に出ることも全く躊躇わなくなっていた。 「もしもしっ」 「……碧さん」  びくん、と動きが止まった。この、声。 「……お、がわさん?」
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