あの頃の僕らにあったもの

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そういった欲に、自己嫌悪するやつもやっぱり居るわけで。 重たい扉を開けて、なかなか見ることのない位置にいる太陽に悪態をつく。 お前はなんだってそこまで空を照らしているんだ、眩しくて目を開けられないじゃないか。 おまけに風も強いだなんて、聞いてないぞ。 ああ、そうか。 なるほど、あいつ律儀にカーテン開けたんだな、さっきの会話を思い出す。 こりゃ目なんか開かねえや。 嫌々に足を動かす、だって立ち上がって重たい扉を開けてしまったんだもの、行かなきゃそこまでに使ったエネルギーが無駄になってしまう。 もたもたと歩きながら、歩く先の景色を見た。 もういろいろな花が咲いている。 僕が布団のなかにうずくまっているあの冬の間に、外の季節はこんなにも春になっていたのか。
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