あの頃の僕らにあったもの

7/11
前へ
/11ページ
次へ
久しぶりにした木登りは、結構大変で。 小さい頃の僕ってば、どうやってあんなにひょいひょいとのぼれたんだと驚いた。 安定して座れる場所を見つけ、一息つく。 高い場所にある、どでかくてしっかりとした木は、どこまでも高かった。 ただただ、気持ちが良い。 疲労感さえ風に流されて、見下ろす景色はくすみが消えたように感じた。 そういえば、木登りをしていた時に僕らの中の誰かが、下に落ちてしまったんだっけ。 それほど高い木じゃなかった。 いつも皆で上を目指して目的もなくのぼっていた木だった。 でも、誰かが怪我をしたことで、上を目指す遊びをやめざるを得なくなってしまった。 僕らは木登りを親に、学校に禁止されたんだ。 そうか、きっとあの時、僕は純粋じゃなくなっちまったんだな。 ふっ、と気づく。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加