あの頃の僕らにあったもの

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リュックの中で携帯が鳴った。 取り出して耳に当てる。 『どこにいんだよ』 「上」 『具体的にな』 「木の上」 はあ?とかなんとか聞こえた気がしたけど、気にせずに切った。 かくれんぼさ、やまっちゃん。 見つからないうちに少しだけ考えて、僕はあの頃の純粋さをぽいっと遠くに投げてみた。 僕は僕だけど、あの頃の僕はあの頃の僕でしかない。 今の僕は、今の僕にしかない感情がたくさんあって、純粋さは今しがた投げ捨ててしまったけど、それはきっと小さい誰かが拾ってくれる。 無くしたものを捨てる、なんて馬鹿げた発想かもしれないけど、気づいて拾った純粋は、もう僕の純粋じゃない。 あの頃の僕の純粋だ。 無くしてしまったものも多い。 いやがおうにも拾わなければいけないものを拾い続けている間に、いつのまにか拾いづらい場所にあるそれを拾いに行くのは億劫だ。
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