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翌朝喉が痛かった。起き上がりたくても関節が痛くて動けない。風邪っぽいけど頭が痛くて考えるのも辛い。下着だけの格好から着替えたいけど寒くて布団を被り手探りにスマホを探す。
やば、風邪ひいた。会社……
『・・・トゥルルルル、大地?』
低い聞き慣れた音は心地よかった。無意識に掛けた番号、いやリダイヤルの一番最初はいつも一穂だからきっと無意識なんかじゃない。心からいつも求めてる。
『……が……ず……ほ、助けて……。苦し……い』
苦しぃ もう つらい
助けてって言ったら泣けてきた。もう何かの限界が近い気がした。ただの風邪なのに……、本当に身体中が痛くて寒い。
たすけて
合鍵で入ってきた一穂は仕事を休んだようだった。俺の額に手をのせてからルームウェアを着せた。温かくて嬉しくてほっとした。なのに、てきぱきと影が動きまた扉の音と共に部屋に静けさが戻るからまた心細くなる。
「……い、かな いで」
言葉にすると本当ダメみたいで涙が溢れ枕を濡らした。苦しい、寂しい、辛い、側にいて……。なんでかな……?
いつも頑張れてるのに今日は本当ダメだ……。
「一 穂 側に いてよ」
たすけて
いかないで
もう 俺を見て
「………… だ よ 」
物音にいつの間にか寝ていたらしいことが分かった。一穂がお湯を沸かしている、レトルトのお粥とスポーツ飲料が見えた。
「一穂、帰ったと思った……」
「そんな薄情じゃねーよ」
お粥を食べさせ薬を飲ませ身体を拭いてくれる一穂にずっとありがとうって言っていた。少しだけ楽になったから、お礼するって言った。そしたら
「赤い顔に潤んだ目で汗滲ませるとかエロいね。口でして」
って言われた。
「口、すげー熱い。上手だね」
芯の持たないそれを口だけで優しく、時々強く舐めて吸って、喉で擦った。飲み込むとき喉が痛いからニコって笑って誤魔化しながら飲み込んだ。
翌朝熱が引いていた。またね、って帰る一穂にありがとうと次は夕飯作って待ってるって言った。
次は一穂が好きなものを作ろう、何がいいかな。
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