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部屋に戻ると大地の目じりに涙の跡があった。心細くなるものだからと頬の涙を指で消し額に触れながら髪を撫でた。
「か ずほ……」
譫言のように呼ばれたが苦しそうだから起こすのも可哀想だ。
「す き だ よ、も つ ら ぃ………」
持っていた薬達が手から滑り落ちた。
嘘だろ?
血の気の引く思いだった。自惚れだと思いたかった。
なのに大地の言葉と行動を振り返っても自惚れなんかじゃないと確信できた。
俺の心が弱る時、必ず側で気を紛わし笑ってくれていた。多分本気だ。
無理だろ……。
だって俺は
決めてるから……。
とりあえず辛そうな大地に薬を飲ませ罪滅ぼしと世話を焼いた。
知ってるだろ俺は男を二度と好きにならないんだって……。
俺なんてやめろよ。
お前に振られたと思わせたくない。自然にお前が離れるなら俺は何も知らないまま友達に戻れるから。
「お礼したい」
酷いこと言う俺を嫌えよ……
戸惑いなく口に含んで反応のないそれに必死で奉仕し、最後は笑顔で飲み込むから俺は何も言えなかった。最低なことしてるんだから怒ってくれよ。
戸惑いつつも心配で一晩中寝顔を見ていた。いつからなんて分からなかった。気持ちがあるならこの関係ではいられない。4年は長過ぎる……、引き摺らせたら可哀想だと思いながら髪を櫛くように撫でた。
次に会うときは友達に戻るために大地から終わろうと言わせよう。
もう二度と最低な奴を好きにならないように、自分から離れる強さを持ってもらいたい。
会う前日に女とホテルへ行き沢山の跡を残したまま大地の部屋に入り酷く冷たくした。
なんで怒らないんだよ。そんな悲しそうな顔でいつも笑ってたなんて知らなかった。
なんで最後の日に俺の好物作るかな……、旨いって言う度にそんなはにかんだ様な嬉しそうな顔してたなんてずっと知らなかった。
いや見ようとしなかった。
大地はすげー優し過ぎる大切な友達だ。傷つけたくないから、俺といたらずっと傷付けるから、だからこれ以上辛い思いさせたくないんだ。
なのに
ごめんな
結局辛い顔させた……
もうこんな最低な奴を想うなよ。
一穂視点終
過去終
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