閑話 ほろ苦い劇薬

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 夜先輩と入った居酒屋はこじんまりとしていてゆっくり喋るのに良い場所だった。  今度四人で来よう! 「・・・・・・・お前な、聞いてるか?」 「はぁ・・・」  先輩は一生懸命仕事がどーのこーのって話している。今は仕事のことなんて考えたくないな・・・  だんだん面倒臭くなって目を閉じたら横から大きな溜め息が聞こえた。 「そろそろ帰るか?」  先輩はお会計まで持ってくれて、そうとう今晩暇だったんだなーって思った。  何となく夜の街を一人でブラブラした。本当は一人行動は好きじゃない。でもなんだか寂しいんだ。  かなり遠くの地下階段から大好きな俺の大地が一人で出てきた。  見間違うはずない! だってずっと会いたかったんだから!  俺は満面の笑みで駆け寄るけど一足遅く、大地はタクシーに乗って行ってしまった。  大地が出てきた場所にはカプリースって看板があった。一人行動が苦手そうでバーになんて通ってる話も聞いたことない。俺は興味本意で階段を下りた。 「いらっしゃい」  暗い店内に照明でお酒が美しく輝いて見えるカウンター内から綺麗な笑顔で迎えるバーテン。  俺はキョロキョロしながらカウンター席に一人座り甘いカクテルを頼んだ。  大地、こんな店に通ってるのか?  一人静かに飲んだ。バーテンは話し掛けてくるこもなく馴染んでいない俺は浮いていて居心地が悪かった。  カランと扉が開きやけにガタイの良いイケメンが一人入ってきた。 「明宏さん、いつもの」  爽やかな笑顔でバーテンに声を掛ける。俺がじろじろ見ていたせいか目が合った。 「一人?」 「はい」 「初めて来るの?」 「はい」  隣に座った男性は智樹と名乗った。
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