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そしてそのまま暫く経ち、当たり前だが小麦は栄養失調で動物病院に入院した。
当時付き合っていた人とお見舞いに毎日行っていたのだが、日に日にまるまると太っていく小麦に少し安心した。
流石病院である。
退院の日、母と迎えに行くと、そこには見るからに健康です!という小麦がいた。
母が、この子、何を食べましたか?と質問すると、先生は「この子缶詰なら何でも食べましたよ」と笑っていた。
なんてことだ、犬の基本のご飯であるドッグフードを食べず、高い缶詰をむしゃむしゃ食べていたなんて…!
子犬の時からグルメだったのだ、小麦は。
ミスター味ッ子だ。
とんでもない犬だ。流石父親がチャンピオン犬であるだけある。
こうして無事退院した小麦はめきめきとでかくなり、今ではダックスフンドのように縦に長いウナギ犬のように育った。
最近では太りすぎだと医者に言われる始末。
そして余談だが、小麦はそれはそれはとてもとても可愛い犬に変身した。
元のあの汚ならしい犬ではない、烏龍茶のようだった毛色は薄い金と白になり、目は零れるほど大きくなり、毛並みもフワフワさらさらのまるでどこかのお嬢様のような犬になった。
そしてなんと、雑誌に載るほど可愛くなった。
そして母には本当の孫のように甘やかされ、私にも娘のように育てられ、どこか調子こいてる犬になった。
そして北海道に帰った母と別れ、私と一緒にずっと暮らし、途中次次代わる私の恋人に愛想を振り撒き、彼女なりに苦労したと思う。
それでも今、私と夫と一緒にいて、時々ニコニコ笑う小麦が私は何よりも愛おしい。
小麦の姿が見えないと家中を探し回る程だ。
そんな私をベッドの下で冷ややかに見つめ、今日も彼女は缶詰を食い、私の寝ている布団に入り込み、私の太ももを舐めるといったイタズラをするのだ。
あのガリガリだったチワワはもういない。
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