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親の目を離れて自由に行動できる場所が欲しい。タクヤもアツシも同じ団地住まいだったので、
その民家は格好の遊び場所になった。ボロボロだったが雨露はしのげるし、わずかな家財道具もあり、
他人の生活のにおいが残るその場所はかなり刺激的な場所だったのだ。
ところが、最近、その秘密基地に誰か、アツシとタクヤ以外の誰かが侵入しているようなのだ。家財道具が移動していたり、アツシたちが置いていた漫画がなくなっていたりしたのだ。
アツシは、怖くなって、タクヤにもうここに来るのはやめようと進言した。だが、タクヤは聞かず
「俺達の秘密基地を荒らすとは、ふてえ野郎だ。しかも俺達の物を盗みやがって。犯人を捕まえてやる。」
と息をまいた。俺達だって、不法侵入じゃないか。そう言いたかった。
その日からアツシとタクヤは交代で、塾や習い事の無い日はなるべくここに来て見張るということになった。
というわけで、今日はアツシが見張り番というわけだ。
一人で見張るのは怖かった。だから、アツシはいつでも逃げられるように、勝手口のドアを半開きにし、逃げ道は確保しておいた。もちろん電気はきておらず、ここに侵入した時、冷蔵庫はあけてすでに腐敗した食物を発見した。どうして、ここに住んでいた住人は、生活を投げ出し、この家を出たのだろう。夜逃げかな?そんなことをぼんやりと考えていた。
すると、勝手口のほうで音がした。ヤバイ、誰か来る!アツシはすぐにダッシュで逃げられるように身構えた。勝手口から台所に誰かが入ってきた音がし、居間のガラス戸に影が映ったと思ったらすっと開いた。アツシは、ダッシュで逃げようとした。だが、入ってきたのは、小さな女の子だった。幼稚園児くらいだろうか。
なんだ、脅かすなよ。アツシは、女の子に近づいて話しかけた。
「どうしたの?こんなところで。君は誰?お父さんとお母さんは?迷子なの?」
そう話しかけると、女の子は涙ぐんだ。
「パパとママ、いないの。どこ行っちゃったの?」
マジか。迷子だ。
「はぐれちゃったの?」
アツシがそう話しかけると、幼女は首を横に振った。
「朝起きたら、パパとママがいなかったの。そうしたら、怖いおじちゃんたちが来て。
パパとママはどこに行ったって聞いたの。」
アツシには何がなんだかさっぱりわからなかった。
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