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「お兄ちゃん、パパとママ探して?」
そう言われても。
「どのへんではぐれたんだい?」
そう女の子に聞くと、
「ここ。」
と答えた。
「ここ?この家かい?」
女の子は、うん、と答えた。
でも、アツシはずっとここにいたけど、誰かがここに来た気配はなかった。
もしや、ここの住人が、帰ってきた?アツシは最悪の状況を想像した。
女の子はアツシの手を握って来た。
「ねえ、探して?一緒に探して?」
そうしてあげたいのはヤマヤマだけど。もしも両親に出会ったら、なんと言い訳しよう。
お宅の娘さんに一緒に探して欲しいと言われたと言えば信じてもらえるのだろうか?
仕方なく、アツシは家中探した。家中とは言っても、小さな平屋。探すべきところは、押入れから、トイレまで全て探しても誰も居なかった。
「パパとママ、いないよ?お兄ちゃんと一緒に交番に行こう?」
そう女の子を促したが、女の子は首を横に振る。
「ミイちゃんも居なくなっちゃった。」
女の子は泣きべそをかいた。まったく、今度はミイちゃんか。
「ミイちゃんって?」
「ウサギの縫いぐるみ。」
「じゃあ、それを見つけたら、お兄ちゃんとおまわりさんところに行こうね。
きっとパパとママに会えるからね。」
そう諭して、アツシは今度はミイちゃんを探した。
やはり、どこを探しても、ウサギのミイちゃんは見つからなかった。
「どこかで落としたんじゃないの?」
アツシがそう女の子に言うと、女の子が口を開いた。
「まだ、探してないところがあるじゃない。」
アツシは、家の中をくまなく探したのだ。トイレまで。
あ、一つだけ。探していないところがあったっけ。
お風呂だ。この民家はかなり古くて、お風呂が敷地内の別の場所にあるのだ。おそらく元々、お風呂はなくて、あとからつけたのだろう。でも、ここを見つけた時に、その煙突があるお風呂場とみられる建物にも侵入しようと試みたが、これまた古くて建てつけが悪くなっている所為か、そこには侵入できなかったのだ。
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