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輝かしい満月をバックに、パステルピンクを基調としたゴシック衣装の少女が、塀の上に立っていた。
それから咥えていた角笛を唇から離し、天高く掲げた。
月灯りが逆光となって顔はよく見えないが、女子高生には、それが誰だか判っていた。
「現れたわね、怪盗ゴシックフェアリー!!」
「予告通り、スケッチブックは頂いていくにゃあ。じゃあね☆」
ゴシックフェアリーは、戦利品のスケッチブックを脇に抱えて、女豹のような動きで塀の上から屋根へ飛び移り、さらに隣の屋根へと次々にジャンプする。
着ている衣装が、月灯りに反射してイルミネーションのように輝き美しく、まるで妖精が空を駆け巡ってるかのようだった。
「待ちなさい! ここで会ったが百回目! 逃がさないわよぉぉぉぉ!!」
「百回目じゃなくて百年目じゃないんですか?」
「今日がちょうど百回目なのよ。間違ってないわ」
段々遠くなるターゲットを、女子高生は道伝いに追いかけていった。
「今回も楽勝すぎて、ちょっとつまんなかったにゃあ」
ゴシックフェアリーは、途中の民家の上で小休止していた。
「依頼とは言え、なんでこういうの欲しがるんだろ? 価値あるのかにゃ?」
スケッチブックをパラパラとめくり、独り言をつぶやいた。最初の一枚目だけアニメかマンガのキャラクターらしき女の子のイラストが描かれていた。
「価値なんて関係ない。盗むこと自体が犯罪なのよ」
「うにゃぁ? もう見つかっちゃった☆」
「今日こそ、お縄を頂戴しなさい!」
追いついた女子高生は、文字通り縄を持って、民家の前で叫んだ。
「お縄を頂戴すると、いいことあるのかにゃ?」
「あるわよ。漏れなくブタ箱行きと、私の尋問を受けられるサービス付きでね」
「それは要らないかにゃぁ」
「そこで待ってなさい、今すぐ捕まえてあげるから」
女子高生は側にあったゴミ箱に乗っかり、塀を登って、屋根へと飛び移った。
「屋根に登るの上手になったねぇ、ご立派☆」
「そりゃ、百回も追いかけていれば、上手にもなるわよ」
「どうして、そこまでして、わたしを捕まえたいの?」
「どうしてですって? いいわ、教えてあげる」
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